2022/11/17
日本製鉄株式会社
増毛漁業協同組合
日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)と増毛漁業協同組合(北海道増毛町)が2004年から共同で取り組んでいる鉄鋼スラグ※1を原料とした「ビバリー®ユニット※2」を使用した藻場造成事業において、海藻藻場であるブルーカーボン生態系でCO2吸収量を算定したものが、今回、国土交通省認可の技術研究組合であるジャパンブルーエコノミー技術研究組合※3が運営するJブルークレジット®の認証を経て、クレジット発行を受けましたのでお知らせします。
1.概要
カーボンニュートラル社会の実現は、世界的な潮流となっています。我が国においても2020年12月に「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが閣議決定され、革新的技術の実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進する方針が示されています。具体的な戦略としては「革新的環境イノベーション戦略」として経済産業省より提示され、そのなかに「ブルーカーボン(海洋生態系による炭素貯留)の追及」も明記されています。
日本製鉄は、北海道増毛町において、増毛漁業協同組合と共同で、2004年から磯焼け対策、水産振興を目的に日本製鉄が開発した海域向け施肥材ビバリー®ユニットによる海藻藻場の造成に取り組んできました。2014年からは、増毛町別苅海岸にて、海岸線300mにも渡る大規模事業へと展開しました。別苅海岸での造成時から毎年実施している調査で、主にホソメコンブの藻場面積を測定し、造成1年後の2015年0.6haから8年目の2022年には3.3haと5.5倍に拡大していることを確認しました。
造成された海藻藻場では大気中のCO2がブルーカーボン※4として長期間貯留されることが既に科学的に証明されていることから※5、海藻藻場の造成はCO2削減策として注目されています。今回、日本製鉄と増毛漁業協同組合は共同で、Jブルークレジット®※6に申請し、直近5年間の2018~2022年に吸収・固定化されたCO2量(ブルーカーボン)として、49.5t-CO2の認証を経てクレジットの発行を受けました。これは、北海道のコンブ藻場で初めての認証であり、漁業協同組合と民間企業との共同申請も昨年度までにはない初めての事例となります。
今後も、増毛町での取り組みを継続するとともに、全国で藻場造成活動を拡大していくことで、当社技術を活かし、ブルーカーボンによるCO2削減に貢献してまいります。
※1:鉄鋼製造時に生産される副産物であり、鉄をはじめとした金属を含む。鉄鋼スラグ中の鉄分が海藻や植物の育成に役に立つことを長年の研究で明らかにしてきた。
※2:鉄鋼スラグと廃木材チップを発酵させた腐植土の混合物を原料とした鉄分施肥剤材であり、森から海へと供給される鉄分を人工的に生成する鉄鋼スラグ製品です。
※3:海洋の保全、再生、活用などの活性化を図ることを目的とし、海洋生物によるブルーカーボンの定量的評価、技術開発、資金メカニズムの導入等の試験研究を行うため、2020年7月に設立された国交省認可の技術研究組合。
※4:マングローブ、海藻藻場などの海洋生態系において隔離・貯留されたCO2由来の炭素のこと。2009年10月に国連環境計画の報告書においてはじめて定義され、陸域の森林等により吸収されるCO2由来の炭素「グリーンカーボン」とならんで、自然ベースのCO2削減策として注目されている。
※5:Krause-Jensen, D. and Duarte, C. M.: Substantial role of macroalgae in marine carbon sequestration, Nature Geoscience, 9, 737–742,https://doi.org/10.1038/ngeo2790, 2016.
Watanabe, K., Yoshida, G., Hori, M,, Umezawa, Y., Moki, H. and Kuwae, T.: Macroalgal metabolism and lateral carbon flows can create significant carbon sinks. Biogeoscience, 17, 2425-2440, 2020.など
※6:ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)が管理する独自のクレジット。JBEから独立した第三者委員会による審査・認証意見を経て発行される。(参照:https://www.blueeconomy.jp/credit/)
2.認証内容
プロジェクト名称: 北海道増毛町における鉄鋼スラグ施肥材による海藻藻場造成
【ご参考】JBEホームページ:https://www.blueeconomy.jp/