2022/04/01
日本製鉄株式会社
皆さん、入社おめでとう。
コロナ禍の収束が未だ見えない中で、ロシア・ウクライナ間の戦争という大変な事態が勃発しました。地球的規模での脱炭素への取り組みが本格化した影響で、エネルギーや資源価格が高騰するという大きなリスクが、ウクライナ問題で増大することとなり、長期化する可能性が極めて大きいと言わざるを得ない状況です。
このような先の見えない時は、「原点と本質」の2つが肝要であると思います。日本製鉄グループの存在意義とは何か。日本や世界に対しどのような役割を果たすべきか、の原点に立ち返るということです。これは、皆さんが将来、仕事や人間関係で悩んだ時に、なぜ自分は日本製鉄に入ったのか、という原点に返るのが大事だということでもあります。もう一つは、今起きていることの本質は何か、ということです。単に現象だけを見るのではなく、背景は何か、会社や自らにとってどのような変化をもたらすのか、を考えるということです。
日本製鉄グループの役割は、地球温暖化問題や自動車産業におけるCASEへの対応等、社会やお客様の様々なニーズや課題に対し、技術と商品で的確に応えていくということです。特に、カーボンニュートラルの実現は国の新たな目標であり、官民あげての総力戦です。国家間競争は既に始まっており、今後とも日本製鉄が世界をリードしていくためには、カーボンニュートラル・スチールを、何としても、他社に先駆けて世界で最初に実現しなくてはなりません。前人未踏の超革新技術への挑戦となりますが、この戦いに勝ち切ることで、当社の優位性は絶対的なものとなります。コスト面で最強の中国に対する劣位を覆していくことにもつながります。また、カーボンニュートラル・スチールを供給していくことで、お客様も国際競争において有利な展開が可能となることから、お客様との関係性においても、当社の存在がより大きなものとなります。カーボンニュートラルの流れにより、技術開発力が競争力とブランド力を決める、当社にとって極めてチャンスの大きい時代がスタートしたと、前向きにとらえ、積極的に取り組んでいきます。
当社は経営危機やコロナ禍を乗り越えて、収益力を大きく向上させてきました。短期間でのV字回復を実現できたのは、従業員や協力会社の皆さんの頑張りのお陰であり、社長として大変うれしく思う次第です。
しかしながら、更に競争力を強化していかなくてはなりません。今後とも、先の見えない時代が続くと想定せざるを得ないからです。かといって、心配する必要はありません。21年度を起点にして現在進めている「日本製鉄グループ中長期経営計画」は、事業環境が更に厳しくなっていくことを織り込んでいるからです。この計画を確実に達成していくことで、変化の激しい新たな時代のトップメーカーの地位を確固たるものとしていくことが可能です。
中長期経営計画は4つの柱から成り立っています。第一は、日本国内での事業を、より付加価値の高い注文を新鋭設備で集中生産する構造へ改革していくこと。第二は、需要が拡大する海外においての現地生産を拡大していくこと。第三は、世界に先駆けてカーボンニュートラル・スチール供給の目途をつけていくこと。そして第四は当社が保有する膨大かつ高度なデータを有効活用することで、意思決定のスピードアップや各職場での問題解決力を強化する、DXの推進です。
以上、4つの柱を確実に推し進め、グローバル粗鋼1億トン体制を構築し、連結事業利益を1兆円へ押し上げ、総合力世界ナンバーワンの地位への復活を目指していくというのが、当社グループの将来ビジョンであり、基本戦略です。
以上のような当社グループの基本戦略を踏まえて、皆さんに、お願いとアドバイスです。
まず、職場規律の徹底による安全確保と法令順守です。決められた仕事の手順と禁止事項を守れば、皆さん自身も働く仲間も、安全が確保される対策は打たれています。安全に関する決まりを完全に理解し徹底してください。勿論、皆さんのフレッシュな目で、もっとこうした方がより安全ではないか、という気づきがあれば、それを周りの人や上司に対して明確に言うことも、皆さんの権利であり義務でもあります。法令を違反する人には当社社員としての資格がない、これは言うまでも無いことです。
次に、職場に配属になったら、仕事を覚えて一日でも早く戦力となって下さい。大事なことは素直になることです。批判の前にまずは現状のやり方で、自分もやれるようになることです。その上で、他にいい方法があるのではないか?そもそもこの仕事は不要ではないか?という目で仕事をゼロから見直す癖をつけることです。背景や事情が変わったにも関わらず、同じように続けているということが多いのも事実です。
そして、明確に問題を把握し、解決策を具体的に考え、周りを巻き込んで変えていく、そういう若手リーダーになって下さい。数年たてば皆さんも部下を持ち、突然重い責任を負っていくことになりますが、その時から始めても間に合いません。教育制度も充実していますが、日々の仕事を通じて自ら育つという気構えが大事です。
アドバイスの最後に、私の座右の銘を紹介したいと思います。日々の実践を通じてのみ力がついていく、という意味の「事上磨練」という王陽明の言葉です。行動や実践を通して知識や精神を磨く、ということです。皆さんへの心からの歓迎の意を込めて、この言葉を贈ります。
大きな変動の時代の中で、多くの困難な課題を1つ1つ解決していかなくてはなりません。社長である私が自ら先頭に立って、乗り越えていく決意です。一致団結して、世界に大きく飛躍しましょう。