2021/07/19
日本製鉄株式会社
「CCR研究会 船舶カーボンリサイクルWG」(WG=ワーキンググループ、以下「本WG」)は、メタネーション技術(註1)によって製造されたカーボンリサイクルメタンが、船舶のゼロエミッション燃料となりうることを確認しました。本WGで行った計算手順と評価の詳細を記した技術論文が日本マリンエンジニアリング学会誌の最新号に掲載されました。
カーボンニュートラル社会実現への道筋の一つとして、排出されたCO2を回収・再利用するカーボンリサイクルの重要性が高まっています。本WGは、メタネーション技術を船舶のゼロエミッション燃料(註2)に活用する構想の実現可能性を探ることを目的として、CCR研究会(註3)に設置され、2020年7月に9社による活動を開始しました。本WGの活動においては、カーボンリサイクルメタンがゼロエミッション燃料となりうることが大前提であることから、第一の課題として、その可能性評価に取り組みました。
国際海事機関(IMO)では、カーボンリサイクルメタンの船上での燃料燃焼(Tank to Propeller)による排出量算定ルールが未整備である一方、燃料供給プロセス(Well to Tank)におけるCO2排出への配慮の重要性が指摘されています。本WGでは、カーボンリサイクルメタン燃料の供給に関わるサプライチェーンとして、①CO2分離・回収、②CO2輸送、③メタネーション燃料合成、④メタネーション燃料液化の4プロセスを想定し、評価(註4)を行いました。その結果、メタネーションによるカーボンリサイクルメタン燃料の単位熱量当たりCO2排出量は、約27-gCO2/MJとなりました(Well to Propellerに相当)。
この数値は、一般にゼロエミッション燃料として認識されている他の代替燃料候補と比較して遜色ない水準であり、カーボンリサイクルメタンがゼロエミッション燃料になりうることが確認されました。また、分離回収技術の効率改善や再生可能エネルギー由来の電力利用などで、約20-gCO2/MJまで削減することが見込まれます。なお、今回実施した可能性評価に関わる計算手順と評価の詳細を記した技術論文が「日本マリンエンジニアリング学会誌56巻4号 」に掲載されました。
本WGは今後、カーボンリサイクルメタンの船舶燃料としての実現可能性をさらに検証するため、大型輸送船によるCO2の輸送、再生可能エネルギー由来水素の供給、メタンスリップ(註5)の防止、液化したメタネーション燃料の供給インフラ、および経済性といった課題への取り組みを進めていきます。
日本製鉄株式会社は、気候変動問題に対する独自の取り組みとして、本年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050~ゼロカーボン・スチールへの挑戦」を公表し、2050年までのカーボンニュートラルの実現を経営の最重要課題と位置付けています。こうした中で、本WG内において、製鉄所から排出されるCO2を分離・回収し、生成した合成メタンを船舶が海上輸送に利用することで、臨海立地であり、原材料の輸入や鉄鋼製品の国内外の輸送のほとんどを船舶で運搬する製鉄業が、鉄鋼サプライチェーン全体でのCO2削減に貢献できる意義は大きいと考えています。
以上
参加社詳細(50音順)
株式会社エックス都市研究所 代表取締役:内藤 弘 本社:東京都豊島区
JFEスチール株式会社 代表取締役社長:北野 嘉久 本社:東京都千代田区
株式会社商船三井 代表取締役社長:橋本 剛 本社:東京都港区
(本WG幹事会社)
株式会社新来島サノヤス造船 代表取締役社長:森本 洋二 本社:岡山県倉敷市
日揮グローバル株式会社 代表取締役社長執行役員:山﨑 裕 本社:神奈川県横浜市
一般財団法人日本海事協会 代表理事会長:坂下 広朗 本部:東京都千代田区
(本WG事務局)
日本シップヤード株式会社 代表取締役社長:前田 明徳 本社:東京都千代田区
日本製鉄株式会社 代表取締役社長:橋本 英二 本社:東京都千代田区
日立造船株式会社 代表取締役取締役社長兼COO:三野 禎男 本社:大阪府大阪市
本件に関わるメディアお問い合わせ先:
株式会社エックス都市研究所
サステイナビリティ・デザイン事業本部地域エネルギー戦略チーム(担当:河野) 03-5956-7503 kohno@exri.co.jp
JFEスチール株式会社 総務部広報室 03-3597-3166
株式会社商船三井 コーポレートコミュニケーション部 メディア広報チーム 03-3587-7015 mrtmo@molgroup.com
株式会社新来島サノヤス造船 技術設計本部 基本設計部 086-475-1559
miz-sdi2@sanoyas.skdy.co.jp
日揮グローバル株式会社
日揮ホールディングス株式会社 グループ経営推進部 コーポレートコミュニケーショングループ 045-682-8026
一般財団法人日本海事協会 広報室 03-5226-2047 eod@classnk.or.jp
日本シップヤード株式会社 管理部総務グループ 045-212-8205 info@nsyc.co.jp
日本製鉄株式会社 総務部広報センター 03-6867-2977
日立造船株式会社 企画管理本部 経営企画部 広報・IRグループ 06-6569-0005