サステナビリティ
環境への負荷の少ない社会の構築に貢献していきます
持続可能な社会の実現のためにはエネルギーの安定供給は最も重要なテーマの一つです。現在、日本および世界の一次エネルギーの3割を担っているのは、石炭です。国際エネルギー機関(IEA)の試算によれば、2035年の未来においてもその比率は変わらず、石炭は重要なエネルギーであり続けると見通されています(出所:IEA「World Energy Outlook2012」より)。
一方、資源の少ない国である日本は石炭のほぼ全量を輸入に頼っています。2011年の石炭輸入量は1億7,524万トン(財務省 貿易統計)で、そのうち約5割を発電用に使用していますが、それに次いで多いのが約4割を占める鉄鋼製造用です。鉄づくりに使用される良質な原料炭は燃料用の一般炭と比べて埋蔵量が格段に少なく、産地も限られているため、常に価格高騰の脅威にさらされています。鉄鋼業にとって、高品質な石炭資源の確保は、持続可能性の観点からも大きな課題です。
これら21世紀の原料ニーズに対応し、石炭の持続的利用に大きな可能性を切り拓いたのが、日本製鉄の次世代コークス製造技術「SCOPE21」です。これまで20%しか使用できなかった低品位な石炭を、50%まで使用可能とした世界初の技術であり、未来のエネルギー安定供給に貢献する画期的な技術として期待されています。
「SCOPE21」は石炭からコークスを製造する技術で、石炭事前処理、乾留2004年の大気汚染防止法の改正で浮遊粒子状物質や光化学オキシダントの原因となる物質として規制対象となった、大気中に気体で排出される有機化合物。、窯出し・熱回収の3つの基本工程から構成されます(下図参照)。
特に、コークス炉に装入する前の石炭事前処理工程で石炭を急速加熱処理することによって、コークスの品質を向上させるとともに、製造時間(乾留時間)を大幅に短縮できることが特徴です。その結果、大幅な省エネルギー効果を発揮します。仮に2020年までに日本のコークス炉の設備更新時にすべて「SCOPE21」を導入した場合、鉄鋼業全体で年間90万トンものCO2削減に貢献できるのです。また、コークス炉で発生する窒素酸化物(NOx)も30%削減できるなど、環境改善効果も併せ持ちます。
当社はこの革新的な環境技術を実現した「SCOPE21」の実機第1号機を、2008年5月に大分製鉄所で稼働させました。さらにその成果を踏まえて2013年6月に名古屋製鉄所で第2号機を稼働させました。
<開発の背景>
日本製鉄は1994年、これまでの自社の研究開発成果をもとに、SCOPE21開発を国家プロジェクトとして提案。 経済産業省の支援と、鉄鋼各社やコークス専業メーカー等11社による協力体制のもと、2003年までの10年間をかけて 研究開発に取り組みました。
高度経済成長期に建設された国内コークス炉の多くが21世紀初頭に更新時期を迎える状況にあり、2020年までに更新を迎えるコークス炉がすべてSCOPE21を導入した場合、原油換算で31万kl/年の省エネ効果が見込まれています。
石炭資源の有効活用を飛躍的に進展させるSCOPE21は、鉄鋼業のみならず、世界のエネルギー安定供給に大きく貢献する革新的な技術です。
乾留炉に新燃焼構造バーナーを導入することで低NOx化を実現、さらに窯出し工程での発じん・発煙防止能力も向上させるなど、高い環境性能を有します。