サステナビリティ
環境への負荷の少ない社会の構築に貢献していきます
世界経済はいま、中国、インド、ブラジル、東南アジアをはじめとする新興国の成長が著しく、2050年に向けて、その経済規模はさらに拡大が予測されています。特に高度成長を遂げる中国・インドでは、この二カ国だけで世界全体の石炭の約50%を消費し、CO2排出量では世界全体の約30%を占めています。
近年、中国・インドでは国を挙げて経済と環境の両立に踏み出しました。中国では2006年、第11次5カ年計画で環境規制をはじめて設け、インドでは2012年、省エネと温暖化問題への対応として各産業部門ごとのエネルギー削減目標を定めています。両国ではこの環境目標達成のため、エネルギー効率の高い技術の導入を決断。その一つの答えとして、日本製鉄のCDQが大きな注目を集めたのです。
CDQは、コークスの冷却に水ではなく不活性ガスを使用し、排熱を回収して発電する設備です(下図参照)。劇的な省エネルギー効果を発揮し、さらに発電時にCO2がほとんど排出されないことが大きな特徴です。また大気への影響においては、ダストの発生をほぼ100%抑えるなど優れた環境性能も有します。鉄づくりという国の経済成長の基幹となる部分で、抜本的な省エネ・CO2削減に寄与するCDQ。新興国へ技術提供することで地球規模の温暖化防止に大きく貢献します。
当社グループの日鉄エンジニアリングは、トップサプライヤーとしてこれまでに、国内外でおよそ110基ものCDQを建設してきました。中国では1985年から当社グループ製のCDQが稼働しています。2003年、中国企業と現地合弁会社「BE3」を設立し、それ以降は第11次5カ年計画の要請もあり、CDQ建設が飛躍的に進みました。2009年には世界最大のコークス処理能力(260トン/時)を誇る設備を京唐鋼鉄に納入。現在までに合計57基を建設し、当社グループの中国での市場シェアは約30%に及びます。
インドには、2011年に当社グループ製のCDQが稼働を開始。これまでに計5基、2017年までに追加5基の建設を予定しています。CDQは、欧米など電力コストの安い国では投資効率に見合わないことから普及が遅れていました。しかし、各国の情勢変化を踏まえ、今後は欧州やブラジルへの普及も視野に入れていきます。
コークス炉から排出された赤熱コークスはバケットでCDQに搬送され、頂上部(装入装置)から装入されます。チャンバー部でコークスは下降しながら不活性ガスにより冷却され、熱回収した高温ガス(約950 ℃)はボイラーに送られ発電用の蒸気を発生させます。ボイラーで冷却されたガスは再びチャンバーに送られます。コークス冷却に水を使用しないため、コークス強度が高まり、高炉の安定稼働や出銑量増加、還元剤使用量低減にも寄与します。
中国で一般的な年産110万トンのコークス炉に対応するCDQの例
CDQは密閉空間で冷却されるため大気へのダスト放出はほぼゼロであり、コークス装入・排出部も集じんにより、ダストの放出を抑制しています。
国名 | 建設数 | 発電量(年間)※1 [GWh] | CO2削減量(年間)※1 [千t-CO2] |
---|---|---|---|
中国 | 71 | 12,533 | 13,627 |
韓国 | 9 | 1,890 | 2,055 |
インド | 10 | 1,903 | 2,069 |
台湾 | 4 | 873 | 949 |
ベトナム | 2 | 549 | 597 |
ブラジル | 5 | 362 | 393 |
ドイツ ※利用停止中 | 1 | 0 | 0 |
合計 | 102 | 18,109 | 19,690 |
※1 2017年度までに建設された設備を対象に算出しています。
※2 当社グループで建設したCDQが1年間稼働した際の発電量とCO2削減量を算出しています。
※3 発電量:蒸気量に発電原単位(高温高圧・中圧時の過去の実績)をかけて算出しています。
※4 CO2削減量:石炭火力にてCDQ発電量と同等の発電を行った場合に発生するCO2量として算出しています。