川西康之(かわにしやすゆき)が手がけた鉄道デザイン

川西康之は建築家・デザイナーとして国内外から注目を集める人物の1人です。
彼は主に鉄道のデザインを手がけており、えちごトキめきリゾート雪月花をはじめ数多くの作品を世に生み出しています。
そんな川西康之ですが、どんな人生を歩み、どのような作品を残してきたのか気になる方も多いのではないでしょうか?
今回は川西康之について、彼の生い立ちから手掛けてきた作品まで詳しく紹介していきます。
川西康之について詳しく知りたい方はぜひ読み進めてみてください。
川西康之(かわにしやすゆき)について
ここでは川西康之という人物について以下の点から解説していきます。
- 生まれと育ち
- 2004年に肥薩おれんじ鉄道のロゴマークが採用される
- 主な受賞履歴
生まれと育ち
川西康之は1976年、奈良県磯城群川西町生まれです。
10代の頃から水戸岡鋭治というデザイナーのパース画に影響され、デザインに興味を持つようになり、デザイナーの道を歩み始めます。
1999年に千葉大学工学部建築学科を卒業した後、2001年に同大学大学院自然科学研究科デザイン科学(建築系)博士前期課程を修了。
その後、デンマークへと渡りデンマーク王立芸術アカデミー建築学科を修了し、オランダのアムステルダムにある建築設計事務所DRFTWD office Amsterdamで働き始めます。
2005年からは文化庁新進芸術家派遣制度によってフランス国鉄交通拠点整備研究所(SNFC -AREP)にて勤務。
日本に帰国後は株式会社栗生総合計画事務所にて勤務後独立し、2014年から株式会社イチバンセンを設立して現在にいたります。
2004年に肥薩おれんじ鉄道のロゴマークが採用される
これまで数々の鉄道デザインを手掛けてきた川西康之ですが、彼の仕事の転機となったのが 「肥後おれんじ鉄道のロゴマーク」です。
川西宏幸はこの頃オランダの建築設計事務所に勤務をしており、個人的な仕事として引き受けていました。
肥後オレンジ鉄道は、鹿児島と福岡を結ぶJR九州鹿児島線を引き継いでおり、この路線を走っていた「特急つばめ」という列車があります。
実はこの特急つばめが、川西康之が尊敬するデザイナーである水戸岡鋭治が手掛けていたものだったのです。
水戸岡政治に影響を受けてデザイナーの道を目指した川西康之は、この仕事は自分がやるべきものだと感じ、ロゴマークの募集に応募することとなります。
総勢700の応募の中から、川西康之の手掛けたロゴマークが採用されましたが、この仕事をきっかけに日本のデザインに課題を感じたため、日本での活動に注力していくこととなります。
主な受賞履歴
川西康之が手掛けてきた作品で受賞したものは以下のものがあります。
土佐くろしお鉄道中村駅リノベーション
- The Watford Group Brunel Award 2014(ワットフォードグループ ブルネル賞優秀賞、オランダ)
- 日本産業デザイン振興会 グッドデザイン特別賞2010 中小企業庁長官賞
- 国土交通省 第9回日本鉄道賞特別表彰 地方鉄道駅舎リノベーション賞等
藤田歯科医院
- JID(公益社団法人日本インテリアデザイナー協会)賞ビエンナーレインテリアスペース賞
- 日本歯科新聞社 第1回歯科医院デザインアワード 最優秀グランプリ
肥薩おれんじ鉄道
- ロゴタイプデザイン最優秀賞受賞
JR枕崎駅舎
- 日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞2013 受賞
えちごトキめきリゾート雪月花
- SBID International Design Awards 2016 Winner of Design for public(国際デザインアワード公共デザイン部門最優秀賞、イギリス)
- IDA 10TH International Design Awards GOLD Winner(米国国際デザインアワード金賞、アメリカ合衆国)
- FDA Asia Design Awards 2016 Silver Award(アジアデザイン賞銀賞、香港)
- ASIA DESIGN PRIZE (大韓民国)
- 鉄道友の会 ローレル賞2017
- 日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞2016等
観光型高速船シースピカ SEA SPICA
- 日本産業デザイン振興会 グッドデザイン賞2020 BEST100 グッドフォーカス賞(地域社会デザイン)
- 日本船舶海洋工学会 シップオブザイヤー2020 小型船舶部門賞
IMタクシーラウンジ
- 公益社団法人国土緑化推進機構 ウッドデザイン賞
【引用】:株式会社イチバンセン
受賞歴からもわかる通り、日本国内のデザインに対して、国内のみならず海外からも高い評価を受けています。
鉄道関係のデザインを手がけることが多いですが、クリニックや船舶など建造物から乗り物まで幅広くデザインを手がけています。
川西康之の有名な作品集
川西康之の手掛けた作品の中でも有名なものを以下4つ詳しく紹介していきます。
- 土佐くろしお鉄道中村駅リノベーション
- 指宿枕崎線枕崎駅駅舎
- えちごトキめきリゾート雪月花
- WEST EXPRESS 銀河
土佐くろしお鉄道中村駅リノベーション
【引用】GOOD DESIGN AWARD 2010 中小企業庁長官賞
川西康之が手掛けた作品の中でも、最も受賞歴が多いのが「土佐くろしお鉄道中村駅のリノベーション」。
土佐くろしお鉄道は高知県にある、四万十川や足摺岬などの西南部と室戸岬などの東海岸を結ぶ線路です。
中村駅は土佐くろしお鉄道の本社のある駅で、時代の身の丈に合ったデザインを目指し、利用者が快適に利用できる空間を実現するためリノベーションを行いました。
建築面積を増やすことなく、広々とした空間を実現するために改札口を撤去し、プラットフォームの一部を待合スペースに改装しています。
駅では人同士がすれ違うケースが多いため、人がより美しく見えるための照明を演出し、駅でしか見ることのできない空間を実現しています。
材質も四万十ヒノキを活用することで、柔らかい質感に仕上げており、自宅や自家用車のようなプライベート空間を上質な形で演出しています 。
指宿枕崎線枕崎駅駅舎
【引用】GOOD DESIGN AWARD 2013 グッドデザイン賞
続いて紹介する作品は指宿枕崎線の枕崎駅駅舎です。
指宿枕崎線は鹿児島県枕崎市にある鉄道路線です。
道路網が発達し車が移動手段の中心になったことで、次々と鉄道路線が廃止になってしまいました。
枕崎駅も2005年に老朽化したことを機に駅舎だけが取り壊されてしまったため、長らくホームだけの無人駅となっていました。
そんな中、地元のシンボルである枕崎駅を復活させたいとの市民の想いから枕崎駅舎建設期成会が設立され、枕崎駅の再建に着手することとなります。
この依頼を受けた川西康之は、枕崎駅の復活に着手。
新しくできた枕崎駅駅車では地場産の木材と石材を使っており、 駅舎に大きく「枕崎駅」の文字をあしらうことで、地元のシンボルとしての枕崎駅駅舎を再建させています。
えちごトキめきリゾート雪月花
【引用】えちごトキめきリゾート雪月花
えちごトキめきリゾート雪月花も川西康之が手がけた作品です。
えちごトキめきリゾート雪月花は新潟県上越市を走るリゾート列車で、 2016年から運行を開始。
コンセプトとしてはリゾートに向かう道中にふさわしいデザインとして設計しており、新幹線のグリーン車やグランクラスに乗って観光地に向かわれる利用者にも満足されるような高級感ある内装に仕上げています。
特に特徴的なのは、車窓から見える景色をいかに快適に体験できるかを第一に考えており、前座席を日本海側に向け、車窓を可能な限り大きくしている点です。
このデザイン設計により、雪月花でしか味わえない眺望体験を可能としています。
WEST EXPRESS 銀河
【引用】WEST EXPRESS 銀河
最後に紹介するのは「WEST EXPRESS 銀河」です。
WEST EXPRESS 銀河はJR西日本が運行させている大阪〜下関を結ぶ特急列車です。
遠くへ行きたいと言う利用者の願いを叶えることをコンセプトとしており、さまざまな設備やデザインを通して、利用者が快適に過ごせる空間を実現しています。
寝そべりながらも景色を楽しむことができる「プレミアムルーム」やひとつのボックスに向い家に席を配置した「ファーストシート」、過ごし方によってコンセプトを分けた3種類のフリースペースなど車内を快適に過ごせる工夫がいくつもされています。
西日本の美しい景色を見られるのはもちろん、天候や時間によって変化する瑠璃紺食のボディなど海や空をイメージしたカラーデザインが施されており、旅の思い出をより深いものにしてくれます。
IMタクシーラウンジの室内サインにチタンを採用
【引用】上越タウンジャーナル
川西康之が手がけた作品の中に「IMタクシーラウンジ」があります。
IMタクシーラウンジとは、新潟県にあるタクシー会社アイエムタクシーが運営するタクシーの待合所です。
内部を豊かに見せるために様々な工夫が施されていますが、特に特徴的なのがタクシーラウンジの室内サインにチタンを採用していることです。
意匠チタンTran Tixxii(トランティクシー)が作り出す美しい雰囲気
IMタクシーラウンジに使われているチタンは、Tran Tixxii(トランティクシー)というデザイニングチタンです。
Tran Tixxiiは見た時の美しさを意識し開発された意匠チタンとなっており、チタンの普遍的な素材特性を保ちつつも、独自の表面処理を施すことにより、光と色のコントロールに優れ、美しい雰囲気を演出します。
IMタクシーラウンジでは、受付表示やトイレの標識といった室内のサインに使うことで、美しさはもちろん、見ている者を飽きさせないユーモアも演出しています。
まとめ
川西康之は日本の多くの鉄道デザインを手がけた、 国内外から評価される建築家・デザイナーです。
単にデザインを手がけるだけではなく、デザインを通して関わる人たちにどのような価値を提供できるのか重視して活動をしています。
既に有名な作品の多い川西康之ですが、 今後彼が手掛けるデザインにも目が離せません。