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チタンとステンレスの違いとは?軽さと丈夫さを活かした航空機への活用事例

チタン基礎

チタンとステンレス、どちらも似た特性がありますがその違いをご存知でしょうか?チタンは原子番号22で元素記号Tiの金属です。一方でステンレスは元素ではなく、鉄にクロムとニッケルを混ぜた合金です。
チタンが身近で使われている事例は指輪やアクセサリーなどの装飾品やゴルフのクラブなどです。ステンレスはキッチン周りの用品や魔法瓶で使われています。
どちらも身近なものに活用されている金属ですが、この記事ではチタンとステンレスにどのような違いがあるかを解説していきます。

チタンの特性をステンレスと比較

チタンは「軽い」「耐食性が高い」「強度が高い」といった特性があり、高価で高品質な金属です。チタン製のものと聞くと高価なイメージがありますよね。チタンは経年変化がほとんどないため、リサイクルが用意で環境にも優しい金属です。ただ、強度が高いことから加工が難しいというマイナスの特性もあります。

鉄やステンレスの60%程度の軽さ

チタンは金属としては軽量で純チタンの密度は4.51g/cm3と鉄やステンレスの6割程度、銅の約半分の重さです。軽さに加え強さがあるので、この特性を必要とするものにチタンが使われています。ジェットエンジン、自転車、ネジ、アウトドアグッズなど様々な用途で活用されています。

数値で見るチタンとステンレスの物理的性質比較

チタンは純チタンの他にチタン合金も存在しています。チタン合金はチタンの長所を伸ばし、短所を補うためにアルミニウムやバナジウムなど様々な金属を混ぜ合わせたものです。以下が純チタンと主なチタン合金、ステンレスの数値比較表です。

材料溶融点
(℃)
密度
(g/cm3)
電気抵抗
(μΩ⋅m)
20℃
熱伝導率
(W/m⋅K)
20℃
比熱
(KJ/kg⋅K)
体積比熱
(W/cm3⋅K)
線膨張係数
(/K×10-6)
20℃
工業用
純チタン
(CP-Ti)
1,668 4.51 0.55 17 0.519 2.3 8.4
α-βチタン合金
(Ti-6Al-4V)
1,650 4.43 1.71 7.5 0.61 2.7 8.8
βチタン合金
(Ti-15-3-3-3)
1,668 4.76 1.4 8.08 0.5 2.4 8.5
ステンレス
(SUS304)
1400
~1,420
7.9 0.72 16 0.502 4 17

引用元:一般社団法人日本チタン協会

チタンは耐食性が高く錆に強い

耐食性とは防錆性と同義で、腐食しにくく錆びにくい性質のことを言います。チタンは酸素との結合力が非常に強く、表面に酸化皮膜を瞬時に形成します。いわゆる不動態です。

ステンレスも同様に錆びにくい性質を持っています。ステンレスも表面に酸化皮膜を貼るのですが、塩化物イオンに対する耐性が弱いです。そこが耐食性でチタンとは異なる点です。
チタンは塩化物イオンに対する耐性も高く、海水に強いです。金属では白金と並ぶ強さを誇る最高レベルです。

数値で見るチタンとステンレスの耐食性比較

チタンは耐食性が高い金属ですが、全く錆びないという訳ではありません。塩酸や硫酸といった非酸化性の酸には酸化皮膜ができないため、弱く腐食しやすいです。以下は様々な腐食媒に対するチタンとステンレスの耐食性の表です。

腐食媒組成(%)温度(℃)耐食性
チタン 18-8
ステンレス鋼
塩酸 10 24 ×
30 24 × ×
10 80 × ND
30 80 × ND
硫酸 10 24 ND
50 24 × ×
10 100 × ND
50 100 × ND
硝酸 10 24
50 24
10 100
50 100
王水 HCl・HNO3
3:1
24 ×
100 ND
弗化水素 5 30 × ×
燐酸 10(通気) 24
100 ×
50(通気) 24
100 ×
塩化第二鉄 10 24 ×
30 24 ×
10 100 ND
30 100 ND
塩化第二銅 10 24 ×
30 24 ×
10 100 ND
30 100 ND
塩化ナトリウム 10 24
40 24
10 100 ◎* 〇*
40 100 ◎* 〇*
アンモニア 10 24
30 24
10 80
30 80
苛性ソーダ 10 24
50 24
10 100
50 100
硫化水素 乾燥ガス 24
湿潤ガス 24
塩素 乾燥ガス 24 × ND
100 ND
湿潤ガス 24 ND
90 ND
蓚酸 10 24
20 52 × ND
50 24 ND
50 100 ND ×

*は孔食その他の局部腐食を起こす場合があります。

記号の説明 ◎:<0.127、〇:<0.127~0.508、△:0.508~1.27、×:>1.27mm/year

【注意】上記はあくまで参考値であり、個々の値を保証するものではありません。

引用元:一般社団法人日本チタン協会

ステンレスと比較したチタンのメリット

チタンの特性を解説してきましたが、その特性を生かしたステンレスにはないチタンのメリットを解説します。

外観の意匠性を高める多彩な発色

先ほど解説した耐食性を実現している酸化皮膜がチタンの別の特性を生み出しています。それが「構造色」です。構造色は塗料による色ではなく、光の反射や屈折によって見える色のことです。

酸化皮膜で跳ね返る光と、酸化皮膜を通って跳ね返った光が重なることによって、発色を引き起こしています。見る角度や酸化皮膜の厚さによって強められる色が異なり、チタンがその強められた色に見えます。イメージとしてはCDの表面やシャボン玉です。CDの表面やシャボン玉はそれ自体に色はないですが、膜で光が反射、屈折しそれ自体に色がついているように見えます。その性質を利用して、チタンの色を自由にコントロールする「陽極酸化」という技術も存在しています。

活用されている例として「チタン発色建材」があります。九州国立博物館の屋根にはブルーに発色するチタン屋根を使用しています。2005年に建築されていますが、2021年現在も色褪せず綺麗な青色を保っています。

塗装ではないためメンテナンスフリー

チタンの発色については塗装をしている訳ではないので、剥がれる心配がありません。また、錆びない特性も持ち合わせているので、チタンの素材そのものがメンテナンスフリーとなっています。このような特性から、様々なものにチタンが活用されています。

建物の屋根や壁

雨や海水にも強いので、建物の素材として適しています。屋根や壁だけでなく、内部の配管や手すりなどもメンテナンスいらずのチタンは適しています。

航空機や宇宙船

軽くて強度があることから、航空機や宇宙船にも活用されています。乗り物は軽量化することで燃費が抑えられることから、軽い素材が好まれます。さらにチタンは錆びない耐食性と耐久性を持っているので、乗り物に適しています。

装飾品

チタン製の指輪やネックレスと聞くと高価なイメージはないでしょうか。錆びずに発色もあり軽くて強度もあるので、装飾品に適しています。酸化皮膜を作ることから、金属アレルギー反応も起こりづらいです。

高い強度と耐食性により補修費を削減できる

紹介したような事例でチタンは活用されています。強度も耐食性も高いので、壊れたり錆びたりする心配がいりません。航空機や宇宙船などの高価な物や、屋根や配管など補修が難しいものに使用することによって、補修費の削減効果も期待できますし、長く使えるので、廃棄物が少なくなることは環境にとっても優しいです。

チタンの軽さと丈夫さを活かした素材転換の事例

航空機の軽量化におけるチタン素材の活用

チタンを活用した航空機の事例をご紹介します。航空機の低燃費化のため、機体の軽量化が進められています。機体やエンジン部分に素材として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使われることが増えてきました。
チタンは耐食性や熱膨張率において、このCFRPとの相性が良く需要が拡大しています。チタン自体が軽量で強度が高いことも使われている理由の1つです。
チタンは、純チタンの他にチタン合金も存在します。特徴によって、航空機の機体やエンジンで活用されている箇所が違うので、それぞれご紹介します。

純チタン

耐食性や成形加工が求められる部品に使われることが多く、厨房やトイレ等の水回りなど、機体の非構造部分に活用されています。

Ti-6Al-4V合金

チタン合金を代表する合金で、機体やエンジンなど航空機の多くの部分で使用されています。利用実績が豊富なので、信頼度が高い素材です。耐用温度が300℃と高くないので、エンジン部分ではあまり高温にならないファンブレードなどで使用されています。

Ti-8Al-1Mo-1V合金

1960年頃に開発された合金で、耐用温度は400℃とTi-6Al-4V 合金よりも100℃高いです。そのため、ファンブレードよりも高温になるコンプレッサーブレード等で使用されています。

Ti-15V-3Cr-3Sn-3Al合金

1980年頃に開発されたチタン合金で、純チタンを超える強度がありつつ、冷間加工性を持っています。その特性を活かして溶接菅やダクトとして使われています。

Ti-10V-2Fe-3Al合金

高強度、高疲労強度な高靭性の高い合金で、離着陸装置用の主脚部品に用いられています。

チタンの耐用年数の長さがエコにも繋がる

チタンは腐食に強く穴あき寿命は、一般的な環境下での耐用寿命は数百年単位以上・半永久的とも言われています。数百年単位の耐用年数は不要ですが、早く劣化する金属を使用してしまうと交換もそのペースで行わなければならないので、耐用年数や強度は高い方が廃材がでずエコになります。

また、神社の屋根など歴史的な建造物に対しては長い耐用年数が役に立ちます。五重塔では1973年に再建した際にアルミ合金の瓦で屋根を作りましたが、40年余りで錆びや歪みが発生してしまい、チタン瓦に葺き替えました。

チタンとステンレスの違いまとめ

チタンとステンレスの違いはお分かりいただけたでしょうか?性能的にはチタンが優れているポイントが多いですが、その分高価でもあるので、身の回りにあるものにはステンレスが使用されていることが多いです。

チタンには「軽い」「強い」「錆びない」という特徴があります。この特徴から建造物や航空機に活用されています。さらに酸化皮膜を作ることから金属アレルギーの反応もでづらいので、装飾品にも活用されています。

チタンとスレンレスは似たような性質もありますが、それぞれ特徴があるので用途も変わってきます。それぞれに適した使い方を行いましょう。

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