ENGLISH
ホーム > TranTixxiiコラム > チタンの加工は難しい?代表的な加工方法と加工の注意点について解説

チタンの加工は難しい?代表的な加工方法と加工の注意点について解説

チタン基礎

代表的なチタン加工の種類

チタンは、軽量、高強度、錆びないなどの優れた特性を持つ金属です。近年さまざまな用途に使われるようになりました。航空宇宙分野をはじめ、化学、電力、自動車、建築などの一般産業分野まで需要が広がっています。しかしその優れた性能ゆえ、加工が難しいとも言われています。成型機ではスプリングバックに悩まされ、職人さんは工具の消耗に困っています。しかし、チタンの特性や加工しようとしているチタンの種類や形状などによって、それぞれに合う加工方法や注意点、対策などを事前に把握しておくことで最善の方法が選べます。まずは加工の方法を紹介します。

切断加工

チタンは硬い金属です。そのため必然的に非接触切断をすることが多くなり、その切断方法としてはレーザー加工、シャーリング加工、ワイヤーカット加工などがあります。レーザー加工は、レーザーの光を集めて照射し、その熱によって光が集まった部分を溶かして切断します。加熱範囲が小さいため変形を抑え、バリなどの不良が少なく、形状対応が広めです。シャーリング加工は刃切断ですが、切断速度が速く大量加工に向いています。ワイヤーカット加工は、材料と電極の間に電圧をかけて放電を起こし、熱を使って材料を溶かしながら加工するもので、高精度で大量加工にも向いています。

曲げ加工

チタンを曲げるには、プレス加工やベンダー曲げがあります。チタンは弾性が強くスプリングバックを起こすため、曲げ加工を行う際には圧力や角度などを材料の習性と寸法や厚みなどにあわせてかなり細かく調整する必要があります。スプリングバックとは板金加工で材料を曲げても元に戻ってしまう現象のことですが、チタンの場合はかなり厄介で成功している加工会社でもかなりの試行錯誤を繰り返した上でできています。

溶接加工

チタンの溶接加工は難しいといわれます。なぜならチタンの溶接部分は大気に触れると反応し脆化現象が起きやすくなるからですが、よく使われるのはティグ溶接(TIG)での加工です。溶接中のチタンをシールドガスに包ませることで空気に触れることが無くなり、脆化や酸化を防ぐことが出来ます。ほかには、MIG溶接や電子ビーム溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接などの加工方法があります。ちなみにチタンと他の金属との溶接は、硬くて脆い「金属間化合物」が生成されるため、基本的には直接溶接はできません。

切削加工

チタンを切削加工する加工方法は、機械加工では、マシニングセンタ、フライス盤、ドリル加工などで行っています。チタンの切削ではよく工具の寿命が他の金属加工に比べて短いといいます。マシニングセンタは自動で工具を交換して加工します。フライス盤は回転する刃物に固定した素材を削って加工、複雑な加工が可能で、少ロット、多品種の生産に向きます。ドリル加工では、加工した穴にドリル自体が入っていくため切削熱が蓄積し屑が溝部に密着することがあるためステップフィードかオイルホール付きドリルを使います。

意匠性を高める加工

チタンの耐食性が優れるという特性が注目され、屋根や壁といった建材に用いられるようになっています。このニーズに伴って表面の意匠性、さらにバリエーションが求められるようになりました。意匠性を高める加工にはどんな方法があるのか、みていきましょう。

研磨加工

チタンの研磨加工にはブラストやヘアライン、鏡面仕上げがあります。ブラストはアルミやガラス球、鉄球などの研磨剤を吹き付けて表面を荒らし、梨地状に仕上げ艶消しをするなどして意匠性を向上させます。よく屋根材に使用されるアルミナブラストといわれる仕上げが代表的なものです。ヘアラインは研磨ベルトや砥石によって研磨目ラインをつけた仕上げです。鏡面仕上げ法はバフ研磨、化学研磨、電解研磨などの方法があり、表面を研磨し光沢を出します。

意匠加工

チタンの意匠加工は大気酸化法、陽極酸化法、化学酸化法があります。大気酸化法は、チタンを大気中で加熱し表面に形成した酸化皮膜の反射光と内部反射光との干渉作用により発色します。ただしバリエーションが少なく、次に述べる陽極酸化法の実用化がもっとも進んでいます。陽極酸化法とは、リン酸などの水溶液中でチタンを陽極にし電流を流すことでチタン材の表面に酸化皮膜を形成する処理によって、膜圧に応じた干渉色が生じます。

チタン加工の難しさ

チタンは強度、耐熱、耐食などにおいて優れた性質を有しますが、ステンレスなどと同様、鋼など他の金属と比較して加工時の工具寿命が短いといわれます。その理由と工具への影響はどんなものでしょうか。

強度が高く切削や溶接が難しい

チタンは強度が高いため切削抵抗が高く、切削温度が工具に伝わる割合が高いことが難しい原因とされます。溶接の際はチタンの溶接部分が大気に触れると反応し脆化現象が起きやすくなります。

熱伝導率が小さく熱がこもって工具が摩耗しやすい

チタンは熱伝導率が小さいため、切削時に発生した熱が工具に蓄積し刃先などの局所の温度が集中的に上昇します。そのため工具との摩擦が大きくなり劣化の原因になります。

活性化しやすく工具に焼き付きやすい

チタンは化学活性化しやすいため、刃先が高温になると工具とチタン材との熱化学反応が進行し著しく工具磨耗を起こしやすくなります。

ヤング率が低く加工時にたわみやすい

ヤング率すなわち縦弾性係数が鋼のおよそ2分の1と小さいため、切削中にチタン材が変形しやすくなります。とりわけ板状の厚みがない加工では加工精度の低下やビビリが発生します。

チタン加工のポイント

ここまでみてきたように、チタンの特性からくる問題点がわかってきました。加工の難しさと工具問題。では、どうすればいいのか。対策はあるのか。みていきましょう。

切削速度を落とす

工具磨耗を抑えるためには、切削温度を低く保つ必要があり、そのためできるだけ切削速度を低く設定します。

切削油を使用する

切削温度と切削抵抗を低く抑えるため、適切な切削油を使用します。高速度の切削では水溶性切削油剤を使い、量を多く圧力を高くして冷却効果が高まります。低速度では、工具先端の磨耗低減や焼きつき防止のため不水溶性切削油剤を使用します。

チタンに適した工具・工作機器を使用する

超硬合金工具が使用されますが、磨耗を抑えるためチタンカーバイドは含まない種類が望ましいです。通常切削では耐摩耗性に優れた超硬合金K10、機器系での断続加工なら耐欠損性に優れた超硬合金K20などが適しているといわれます。

まとめ

いかがでしたか。チタンの特性、加工や問題点、対策などについて述べてきました。チタンは万能といってもいい特性を持つ素材ゆえに、その加工には制限が強く、まだ普遍的な方法が確立されていないのですが、今後も金属素材としてその精製方法から含めたコストダウンが図られる余地がじゅうぶんにあり、言い換えれば今後さらに一般産業分野への普及が期待されます。資源的にも余力があり、リサイクル性も高いため、鉄やステンレス、銅などの金属以上に身近な素材になる日はそう遠くはないでしょう。

Follow Us!

Fecebook Twitter Instagram Linkedin Youtube
公式SNSのご紹介へ