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和モダンを叶える現代の数寄屋デザイン

建築

和モダンの数寄屋建築は、具体的にどのような建物なのかをご存じでしょうか。数寄屋とは、もともと自然と調和したデザインが特徴の建築であり、シンプルながらも美しい建物です。現在でも、古い寺院や茶室を再建工事するときなどに使われることのあるデザインです。

今回は数寄屋を現代風にアレンジした和モダンな建物を、詳しく解説していきます。この記事を見て数寄屋に興味がわいた、という人はぜひ実際の和モダンな数寄屋建築を見てください。

数寄屋とは

数寄屋とは一般的に母屋とは別に建てられた小さな茶室を指しますが、なぜ茶室のことを数寄屋と呼ぶかを理解するには「数寄」の言葉の成り立ちから知ることが重要です。 百科事典には「数寄」は以下のように解説してあります。
数寄(すき)
「茶の湯を意味する言葉。平安時代には,〈好く〉の連用形である〈好き〉は色好み,あるいは風流文雅を好むこと,の意味であった。鎌倉時代に入ると,色好みとは区別して〈数寄〉という文字が使われるようになったが,それはもっぱら歌道の風流を意味する語として用いられていた。数寄が茶の湯を対象とするようになったことを示す例は,歌論集《正徹物語》(1444‐52年ころ成立)であり,歌数寄に対して〈茶数寄〉という語が用いられている。」

「数寄」の成り立ちが「好き」であることからも分かるように、数寄屋とは元々、好きなように造った建物という意味でした。そして、室町時代には「茶数寄」や「歌数寄」といった言葉があり、当時は茶や和歌などの風流を楽しむための建物が数寄屋でした。

茶室として利用された「数寄屋」

安土桃山時代には「数寄屋」は現代と同じく茶室の意味で使われています。安土桃山時代までの一般的な建築スタイルは書斎や棚などを設けた「書院造」でした。しかし、 四季の風景を楽しみながら風流を愛する茶人や歌人は豪華な装飾や、当時主流だった格式ばった造りをあまり好みませんでした。こういった風流人と合わない書院造の茶室は、当時の権力者が権力と財力を見せつけるために作られていることが多かったのです。
そのため、茶人は「自分の好みに合わせて造られる」数寄屋建築を好むようになりました。好みに合わせて、とはいっても豪華なわけではなく、過度な装飾を抑えてすっきりとした造りを好んでいます。

やがて、数寄屋建築は茶室だけにとどまらず、江戸時代以降は住宅としても料亭などの店舗としても活用されるようになりました。さまざまな建物に数寄屋デザインを取り入れていたため、同じ数寄屋デザインだといわれても首をかしげるほどに、受ける印象はバラバラです。現代でも歴史的建造物の多くに数寄屋造りが残っており、今でも日本の美しい建築物を見ることができます。

シンプルで自然と調和したデザインが特徴

数寄屋は基本的に好みに合わせて好きなように造られていましたが、どの数寄屋建築にも共通する点があります。それは「シンプルで自然と調和したデザイン」ということです。
かつて名をはせた茶人である千利休がわび茶を完成させたのと同じように、数寄屋も千利休の好みに合わせて極力無駄な部分をなくしています。シンプルでありながらも美しく自然と調和の取れた建築物という近代のスタイルを確立し、周囲の景色を楽しむことも念頭に入れたデザインは、庭の眺めから四季を感じられる造りになっています。

現代の和モダンな数寄屋デザイン

数寄屋デザインは現代建築にも受け継がれています。無駄な装飾をしていないシンプルなデザインや木材を多用し自然と調和した家など、現代の和風建築に取り入れられています。
数寄屋のように風情を感じられる「和」のデザインを現代の生活スタイルに落とし込んだものと考えるとイメージが湧きやすいです。

チタン建材で瓦の風合いを実現

建築する際、内装は和と洋をうまく組み合わせておしゃれな和風テイストにできますが、外装を和風テイストにするのはなかなか難しいです。とくに数寄屋造りを目指すなら屋根は瓦にしたいところですが、地震の際に瓦が落ちて割れる危険性があります。

また、風雨にさらされて割れたり壊れたりする可能性もあり、初期費用も高いことからスレート屋根にするなど粘土瓦ではなく、ほかの建材を代用することも多くあります。

そんな中、おすすめしたいのがチタン建材です。独特の渋い色合いで瓦の風合いを実現していながら、加工しやすいという特徴を持っています。また、熱膨張による狂いが少なく、屋根だけでなくさまざまな建材の代わりとして注目されています。発色性にも優れており、カラーバリエーションが非常に豊富でデザイン性も優れているため、どのような要望にも応えることができます。

さらにチタン建材は耐久性が非常に高く、50年以上長持ちすることもあります。軽くて簡単に加工ができ、熱にも錆にも強い優秀な建材です。とはいえ、さすがに高額な施工費用が掛かるため、一般家庭で使用するのは難しいといわざるを得ません。

アルミナブラストによる表面処理

チタン建材にアルミナブラストによる表面処理技術を使うことで、錆や汚れを取り除き表面をきれいに処理することができます。また、密着性のある塗装加工をすることで剝がれにくく、屋根にチタンを採用する場合、アルミナブラスト表面処理を活用すると、きれいに仕上がります。

基本的にアルミナブラスト表面処理は、酸化アルミニウムを使った研削材を使用することで、非金属の表面を美しく磨くことができます。

チタン建材を使用した数寄屋建築の実例

実際にチタン建材を使用した数寄屋建築を2事例ご紹介し、チタン建材がどのようなものか、また、数寄屋デザインの美しさとともに解説いたします。

金閣寺茶室(常足亭)

金閣寺茶室は、屋根はチタン瓦ぶきで、美しく洗練された外観と落ち着いた雰囲気の茶室です。金閣寺には夕佳亭と常足亭の2種類の茶室がありますが、このうち、チタン瓦ぶきで数寄屋造りなのは常足亭です。

足利義満の没後600年を記念して金閣寺の再建工事が行われた際、常足亭も改修工事の対象となり、それは、当時の金閣寺住職たっての願いだったそうです。
常足亭を再建したのは、茶室づくりを専門に行う大工の棟梁で、数寄屋建築に造詣の深い人物でした。木材などにも強いこだわりがうかがえますが、大工の棟梁が最もこだわったのは、建物の丈夫さです。また、くぎを一切使わずに木と木を組み合わせただけで、常足亭は完成しました。こういった技法こそが、まさに日本の伝統建築といえるでしょう。

また、池の近くにあることで、美しい景色を堪能することもできます。四季折々の庭を楽しめる、自然と調和の取れた建築であることも、数寄屋建築の特徴といえます。

佐川美術館茶室

佐川美術館茶室もまた、チタン瓦ぶき屋根を持つ数寄屋造りの建物です。水に浮かぶ美術館の名を持つ佐川美術館茶室らしく、水に浮かぶ広間があります。「人は自然と同じレベル、目線で生きていかなければならない」といった思いから作られた茶室は、自然と一体となり美しい景色を作り出しています。まさに、数寄屋造りの「自然との調和」を表現しています。

当時の設計秘話や茶室に関する事などは、定期的に開かれる茶室見学会の時に聞くことができます。和モダンな数寄屋デザインをしっかり堪能することができる茶室見学に、ぜひ参加してみてください。

茶室は撮影禁止区域であるため、写真に残すことはできません。茶室は完全に和テイストでありながら、落ち着いた雰囲気です。飾りを過度につけていくような派手な作りでは決してなく、非常に落ち着いた雰囲気の日本建築らしい建物です。

和モダンを叶える現代の数寄屋デザインまとめ

日本人なら誰しもが感じる、和への安心感。古くからある数寄屋のデザインは現代建築の和モダンの基となっているといっても過言ではないでしょう。

今回紹介した数寄屋建築の建造物にはチタン屋根が使用されています。チタンは金属でありながら、数寄屋建築にも活用されるほど歴史的建造物との相性が良く、その理由は主に「耐久性」と「デザイン性」が挙げられます。

伝統的な屋根材である柿(こけら)、檜皮(ひわだ)、瓦、銅も、チタンと比較すると耐久性に劣ります。神社仏閣などの木造建築物では屋根が最も早く腐っていき、雨漏れしてしまうと一気に建物の寿命が縮んでしまいます。それほどに、屋根の耐久性は重要です。デザイン面においてもアルミナブラスト表面処理を活用すると、きれいに仕上がります。

数寄屋建築とチタン屋根について興味を持たれた場合はぜひ、「金閣寺茶室(常足亭)」「佐川美術館茶室」に足を運んでみてください。

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