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フランクゲーリーが建築した建造物

建築家

フランクゲーリー展「I Have an Idea」が2015年10月に開催されました。フランクゲーリーの思想や想像のプロセスを感じ取れる展示会として数多くの日本人が参加しました。作品集だけでなく、名言なども残されており、実際に参加することで彼の作品に対する姿勢を伺い知ることができます。

フランクゲーリーはアメリカ合衆国を代表する建築家です。また、このように日本で展示会が開催されるなど、世界的にも有名であるといえるでしょう。

今回はフランクゲーリーの生い立ちや受賞歴、有名な作品集をご紹介します。興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

フランクゲーリーについて

フランクゲーリーは、アメリカ合衆国を代表する建築家です。ロサンゼルスを本拠地に活動しており、現在ではコロンビア大学建築大学院教授、イェール大学でも生徒たちに建築を教えています。建築業界で知らない人はいない、とても有名な建築家です。

フランクゲーリーは建築に関する賞を数多く獲得しています。一見、順風満帆の人生に思われますが、それとは正反対で波乱万丈の人生といえます。

生まれと育ち

フランクゲーリー・オーウェン・ゴールドバーグは、1929年2月28日にカナダのオンタリオ州にあるトロントに生まれました。父は、ニューヨーク出身でロシア系ユダヤ人のアーヴィングゴールドバーグ、母はポーランド中央部にあるウッチ出身のユダヤ人セルマです。

父はセールスマンで娯楽設備などを販売していました。また、家具作りをしてお金を稼いだり、ボクシングに熱中したりした時期もあり、安定した職業に就いていなかったため、裕福な家庭ではなかったのです。

そのような環境でもフランクゲーリーは、音楽や絵画に興味を持ちます。外で遊ぶというよりも創造的な子供でした。実際に、この頃には『小さな町』という創作物を残しています。薪ストーブの木くずで制作した作品ですが、ゲーリーは後にこの作品が創作の原点になったと語っているのです。

また、10代になると祖母の金物店を土曜日や平日の放課後に手伝うようになりました。このときに、波型鉄板など工業用素材の使用を経験したのです。

フランクゲーリーは、出身地のトロントの高校を卒業しました。その後、1947年に家族と一緒にロサンゼルスに移住しました。生計を立てるためにトラック運転手として働き、親戚の事業を手伝いながらロサンゼルスシティカレッジの夜間学校に通っています。ロサンゼルスシティカレッジは、アメリカの中でも比較的学費が安く、多く映画スタジオを保有しているという点などが特徴です。フランクゲーリーはそこに通い、建築や美術を学びました。

働きながら夜間学校に通う苦学生です。周囲から助けを得られることができず、すべて自分で生活してきたこの頃の経験が、ゲーリーの自助精神を構築しました。

この頃から建築家になることを想定して知識を身に付けていたわけではありません。その証拠に南カルフォルニア大学で美術史や陶芸も学んでいます。

1952年、妻となるアニタと結婚。1954年には南カルフォルニア大学の建築学士号を取得しています。同じ年に、アニタは第一子を出産しました。この誕生を機会に、ゴールドバーグからゲーリーに姓を変更したのです。元々、ユダヤ人は姓を購入しなければなりませんでした。購入できる姓の中には、ローゼンタールやシルバーバーグなどがありましたが、ゴールドバーグもそのひとつです。フランクゲーリーは、反ユダヤ主義の影響を避けるために、改名したとされています。

大学卒業後、徴兵のために陸軍に2年間所属しました。このときに、手掛けたのが隊員クラブの改修です。隊員クラブとは、駐屯地にある小さな居酒屋のことを意味します。除隊後はハーバード大学デザイン大学院で都市計画を学びました。

都市計画を学び終えたあと、ロサンゼルスに再び移住し、ペレイラ&ラックマン事務所に所属。すぐにヴィクター・グルーエン事務所に転職しました。ヴィクター・グルーエン事務所は、大学時代に働いていた事務所です。そこに1960年まで所属し、住宅だけでなく、商業施設など数多くの建築物の設計に携わりました。

パリへの移住

1961年、スティーヴス邸の設計料を使って妻と2人の子と一緒にパリへ移住しました。パリへの移住の発端は友人からの誘いです。移住後は、建築家のアンドレ・ルモンデ事務所で働きます。

その1年後の1962年に再びアメリカに戻ります。そして、5年後の1967年に自身の事務所を設立しました。設立当初、家具のデザインの仕事を引き受けましたが、投資家と価格の面で意見が食い違い、事業が思い通りに軌道に乗ることはありませんでした。成功に恵まれるまでに約11年の歳月を費やすのです。

フランクゲーリーの作品に注目が集まったのは1978年です。サンタモニカにある自宅のリノベーションをした作品、『ゲーリー自邸』になります。安価な費用に抑えて行われた改修です。築60年の住宅にトタンの波板や金網を張り、木材とガラスを使用してスカイライトを制作しました。常識を逸脱した増築を行ったのです。その様子は非常に独創的でした。また、当時の人にはただのガラクタに見えたので、近隣住民には不快感を与え、クライアントはその光景を見て離れていったといわれています。しかし、世界からはチープで粗雑な工業用素材を使用して美しさを見出した独創的なアイデアとリノベーションに注目が集まり、自宅の改築によってフランクゲーリーという名が知られるようになったのです。

その後、フランクゲーリーは脱構築主義建築を先駆ける代表の一人として数えられるようなります。脱構築主義建築は、破片のような建物の形状という特徴を持つように、当時は実際に建つことがない建物をイメージした建築のことでした。しかし、フランクゲーリーによってポストモダン建築の一派として構築されたのです。

ゲーリー自邸のリノベーションをきっかけに、プリツカー賞や高松宮殿下記念世界文化賞など、数々の賞を受賞し、アメリカを代表する建築家として名を馳せるようになりました。

フランクゲーリーの凄みは、システム技術にも精通していることです。現在、建築の設計にモデリングは頻繁に使われる方法のひとつになります。しかし、フランクゲーリーはこの頃から航空力学や機械設計向けソフトであるCATIAを建築設計に適応しているのです。CATIAはキャティアと呼ばれており、3次元CADソフトシリーズのことになります。ダループダッソーによって開発されており、フランス最大のIT企業です。

ゲーリーの残す作品の中には、ソフトウェア技術を駆使して設計されたものもあります。また、これらの技術をビジネスにするために、2002年にGehry Technologies社が設立されました。

主な受賞履歴

フランクゲーリーが受賞した賞は下記の通りです。

  • プリツカー賞
  • 高松宮殿下記念世界文化賞
  • ウォルフ賞
  • AIAゴールドメダル
  • RIBAゴールドメダル
  • アストゥリアス皇太子賞 芸術部門

フランクゲーリーがプリツカー賞を受賞したのは1989年です。プリツカー賞は建築業界のノーベル賞になります。

高松宮殿下記念世界文化賞は、日本美術協会によって1988年に創設された文科賞です。建築や音楽、演劇など世界の中で特に業績を残した芸術家などに贈られます。フランクゲーリーは建築部門で1992年に受賞しました。

そのほかにも、ウォルフ賞やAIAゴールドメダル、RIBAゴールドメダルなど数多くの賞を受賞しています。

フランクゲーリーの有名な作品集

フランクゲーリーが手掛けた有名な作品はたくさんあります。特に有名な6つの作品を取り上げて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

グッゲンハイム美術館ビルバオ

リンク先:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Guggenheim-bilbao-jan05.jpg

1つ目がグッゲンハイム美術館ビルバオです。グッゲンハイム美術館ビルバオは、スペイン北部のバスク地方の自治州にある近現代美術館になります。ビルバオは、人口35万人の都市で世界中から100万人以上の観光客が訪れる観光都市です。

グッゲンハイム美術館は、ネルビオン川に沿って建てられています。また、外観はまるでフェリーのようなので、川側から見るとまるでネルビオン川に浮かぶ巨大船のようです。

グッゲンハイム美術館はCATIAを使用して作られた作品としても知られています。外観の表面は魚の鱗のようになっており、陰影を自然に作り出しているところも魅了している部分です。

内観は、いくつもの空間が重なり合う構成となっており、ダイナミックな印象を持ちます。脱構築主義の代表作品といわれており、フランクゲーリーを語る上で欠かせない作品です。

ウォルト・ディズニー・コンサートホール

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2つ目は、ウォルト・ディズニー・コンサートホールです。フランクゲーリーが設計を手掛けた作品になります。

ステンレススチールのパネルを使い、外観を表現しているのが特徴です。まるで異次元のような建物で、不規則な形が見る人に新鮮さを与えます。

内装に使われている要素は、水平垂直でないものを多く採用しています。一方、導線はしっかりと確保されており、ユニークな形でありながら利便性を損なっていないところも特徴のひとつになるでしょう。

来場者の中には、ウォルト・ディズニーの音楽を楽しむために訪れる人もいますが、建物を歩き回り見学するために訪れる方も珍しくありません。それだけ人々を魅了する建築物といえます。

フォンダシオン・ルイ・ヴィトン /ルイヴィトン財団美術館

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3つ目は、ルイヴィトン財団美術館です。フランクゲーリーが船やヨットに見立てて作られた作品になります。また、建物と森が合わさり、溶け込むというコンセプトのもと、設計されました。そのため、不規則な形をした建物の周りには、数多くの木々が植えられています。

内装には、ルイ・ヴィトンを象徴する要素を数多く採用しています。例えば、カフェにはルイ・ヴィトンを象徴するトランクがディスプレイされているのです。

屋外のテラスは360度パリを見渡せる作りになっており、屋上からの見晴らしに関しても細かく設計された建物となっています。

ダンシング・ハウス

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4つ目は、ダンシング・ハウスです。ミルニッチとフランクゲーリーが設計した作品で、外観はカップルがダンスを踊っているように見えるようなデザインになっています。

完成当初は、あまりにも設計が斬新なため、周囲から受け入れられませんでした。なぜなら、ダンシング・ハウスがあるプラハには、歴史的建造物が数多くあるからです。しかし、現在はフランクゲーリーの建築物として数多くの人々に受け入れられます。

マルケス・デ・リスカル

リンク先:http://abeatelier.com/marquesderiscal/

5つ目は、マルケス・デ・リスカルです。マルケス・デ・リスカルは宿泊できるワイナリーとして知られる、2006年に開業した五つ星ホテルです。

屋根が波立っており、独創的な外観です。また、ライトアップされると雰囲気が一変し、まるでジブリの世界が現実になったかのような錯覚を覚えます。

客室には、曲線などを積極的に採用してユニークなデザインです。フランクゲーリーらしい独特な雰囲気を持つ建築物になります。

ニューヨーク・バイ・ゲーリー

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6つ目は、ニューヨーク・バイ・ゲーリーです。ニューヨーク・バイ・ゲーリーはスプルース・ストリートとも呼ばれる高層マンション。アメリカのニューヨーク市、マンハッタンにあるブルックリン橋に位置しています。

高層マンションの表面はフランクゲーリーらしい波打つようなデザインです。また、真上から見ると凸の形をしています。

夜になると部屋には明かりが灯るため、輝くツリーのように見えるのが特徴です。

マルケス・デ・リスカルにチタンを用いたデザインを採用

フランクゲーリーは外観にチタンを使用している作品が多いですが、マルケス・デ・リスカルもそのひとつです。最後に、マルケス・デ・リスカルにはどのようなチタンを採用したのか詳しく解説します。

外装に新日鉄製のシャンパンゴールドとピンクの発色チタンを採用

フランクゲーリーは、マルケス・デ・リスカルの別館であるワイナリー・アネックスに、新日本製鐵株式会社製のチタン12トンを採用し使用しています。シャンパンゴールドとピンクの発色チタンで制作されており、これにより美しい見栄えを実現しているのです。

発色チタンの特徴を最大限活用したデザイン

また、発色チタンの特徴を最大限活用したデザインの建築物です。発色チタンは、チタン表面で反射する光と酸化皮膜で反射する2つの光が干渉作用を引き起こすことで固有の色調を表現しています。

ピンクに発色するチタンは赤ワイン、ゴールドは白ワインを表しています。発色チタンの特徴を活かし実現した芸術性の高いデザインといえるでしょう。

まとめ

今回は、フランクゲーリーとはどのような人物なのか、代表作品についてご紹介しました。フランクゲーリーは建築業界では知らない人がいないといえるほど有名な人物です。ご紹介した作品以外にも彼が設計を手掛けている建築物は数多く存在するので、時間に余裕がある人は調べてみてはいかがでしょうか。

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