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2021.07.19
特集
新商品"FeLuce®"の商品化に至る困難と試行錯誤のプロセス。
開発担当者が語ったその内容とは?
新商品FeLuce®には、商品化に至る過程では壮絶な試行錯誤があった。開発担当者(現在でも瀬戸内製鉄所で陣頭指揮を執る久米)が語ったその内容とは。




1.開発の背景:家具、室内内装の「外観高級化志向」に応えて
広畑地区の電気亜鉛めっきラインEGLで製造される製品は、多くの家電製品や塗装鋼板原板(家具、室内内装など)に使用されています。近年、これら製品における外観の高級化志向が高まる中、当社では鋼材そのものの見た目の美しさを追求し、FeLuce(フェルーチェ・ヘアライン調電気亜鉛ニッケル合金めっき鋼板)の開発を開始しました。発端は感性品質が高いステンレスやアルミの表面に施される「ヘアライン仕上げ」(単一方向の細い筋目模様)に着目し、めっき鋼板への展開を考えたことでした。
しかし、ターゲットの鋼材家具・内装建材などには外観と防錆性能を保つため、錆びにくいステンレス・アルミ素材や、鋼板表面を分厚い皮膜でコーティングした塗装鋼板・ラミネート鋼板を使用することが一般的です。
そこで、めっき鋼板の表層にヘアライン加工を施した上でも諸性能を満たす薄膜の樹脂コートの開発に着手。ヘアラインによる輝き・光沢を保持したまま、製品としての機能を両立させることに成功しました。




2.特長:鉄に新たな価値を見出すブランディング
FeLuce = Fe(鉄の元素記号)+ Luce(イタリア語で光)というネーミングには、「鉄の金属素材本来の風合いが新たな可能性を照らす」という思いが込められています。商品のコンセプトを象徴する商品名・ロゴを製作し、素材に新たな価値を見出す商品としてブランディングしました。商品バリエーションには、お客様の使用用途に合わせてシルバーとブラックの2色を準備しました(写真1.外観イメージ)。
FeLuce開発のコンセプトは次の3点です。
①金属らしさ(めっき表面のヘアラインの美しさと輝き)
FeLuceは電気亜鉛ニッケル合金めっき鋼板(NSジンクライト)のめっき表面に研削ブラシでヘアライン加工を施し、薄膜樹脂コートを塗装したものです(図1.皮膜構成)。樹脂コートの塗装をわずか数μmに設計することで表面ヘアラインの輝きを維持します。また、お客様の剪断加工で課題となるエナメルヘア(樹脂コート剥離)の抑制にも成功しました。
②しなやかさ・なめらかさ(鋼板の良好な加工性)
お客様の加工時もヘアライン・樹脂コートの損傷がほとんどなく、鋼板の素材としての加工性の良さに追随して使用時のデザインの自由度が高いことも魅力です(写真2.加工例)。
③引き算のデザイン(EGLライン一貫製造)
今回、EGLラインに研削ブラシ設備を導入し、インラインでヘアライン加工まで完結させるものづくりに挑戦(図2.EGL製造工程)。素材の加飾や機能を付与するための工数・材料などを省くことができ、エコで無駄のない商品に仕上げました。




3.実機化と安定生産への道のり:次々と押し寄せる難題に最適解を
ヘアライン調鋼板の開発は2014年頃に開始し、樹脂コート塗布が可能な広畑EGLで製造検討を進めてきました。開発の過程では、ラボ試験によるブラシ毛の種類の検討、性能を満足する樹脂の調合、樹脂の色味調整など、綿密な検討を経て実機の製造立上げに至りました。
製造過程では、ヘアライン加工を行うブラシ研削と機能を満足する樹脂コートが最大のポイントです。輝きと光沢を実現するブラシ仕様の検討を行い、2020年6月にEGLに設備導入、実機検証を開始しました。外観のカギとなるのは、ブラシ研削制御による均一な光沢の造りこみと樹脂コートの塗装安定性です。特に、塗装欠陥が顕著になりやすいブラック色の塗装が課題でした。広畑のラボ・実機試験のみならず、阪神地区のラボ試験設備も活用し、あらゆる塗装条件を試行錯誤。製造時の塗装条件の検討と樹脂の物性調整を何度も繰り返し、安定塗装条件を確立しました。
また、新たな、より厳格な外観管理のため検査体制も確立しました。
このように研究部門(RE・瀬戸内)、製造、設備部門、管理の各部門が一丸となって開発を進行しました。次から次へと押し寄せる課題に時には激しく議論しながらアイデアを捻出し最適解を導き、新商品としてプレスリリースに至るまでの背景には、各部門との強い連携が手がかりであったと実感しています。




4.お客様での広がる適用範囲:国内外の約150社に新提案
拡販のターゲットは、鋼材家具・内装建材・宅配ボックス・AV機器など。国内外150社を超える需要家に新提案を行い、お客様の品質評価を行って頂いています。FeLuceの光沢感は好反応で、他素材で実現できなかったコスト面・機能面も多方面の需要家から関心を頂いています。また、お客様使用時の課題解決(溶接・加工・設計)にも取り組み、使い方に副ったソリューション提案も行っています。
コロナ禍で需要家訪問が制限される中ですが、新商品のPRとして、広畑展示スペース、F-Tech.Plaza(阪神地区堺)ショールームに展示、積極的な拡販活動に努めています。
FeLuceの持つ可能性は大きく、新たな市場を狙えると確信しています。今後のさらなる拡販に向け、塗装の多色化展開も検討中です。お客様の期待と信頼に応えるべく、品質の管理、良品の提供を目指すとともに、瀬戸内を活気づける商品の一つとして確立することを目指します。

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