サステナビリティ
環境への負荷の少ない社会の構築に貢献していきます
日本製鉄は、IT技術に磨きをかけながら、優れた機能を持った鉄鋼製品をつくってきました。そしてこれからも、鉄づくりで培われた最先端のIT技術と鉄鋼製品を社会に提供し、持続可能な社会を支えていきます。
当社は、1968年に他産業に先駆け鉄鋼の製造プロセスに24時間365日稼働するオンラインシステムを導入しました。以降ITの進展とともに、製造現場で発生する膨大なデータを収集・解析してコスト削減や品質向上に活用するなどのデータの高度活用に取り組みながら、AIを活用した熟練技術者の技能の伝承、鉄鋼製品の製造、生産設備の保全・メンテナンスの最適化・効率化等の取組みを行ってきました。
また、2016年4月に、さらなる先進的な高度IT活用を検討・推進する専門組織を本社の情報システム部門に設置、加えて、2018年4月には、研究所内にビッグデータ解析やAIを研究する組織をつくり、基礎研究から高度IT 活用に取り組む体制を整えました。
現在、それらの組織を中心に、高度ITを活用した生産現場の全体最適化に向けた次のようなしくみづくりを進めています。
(1)最新のビッグデータ解析を用いて、高い品質と安定した製造を継続するためのしくみ。
(2)AIを活用して、従来は熟練者が考えていた、どの注文をどの製造設備でいつつくるかという生産計画の自動作成や、その計画に基づいて工場に生産指示を効率よく伝えるしくみ。
(3)スマートフォンとIoT(Internet of Things)を用いて、作業指示を素早く的確に作業者に伝えたり、作業者の位置情報・健康状態等の安全に関わる情報を遠隔地にいる管理者が把握し、作業者の安全を見守るしくみ。
(4)多くのセンサーと操業情報に基づいて設備の故障や異常を事前に予測して、設備を健全な状態に保つしくみ。
このようなしくみを構築することで、お客様にはより高品質な製品をより効率よく短納期でお届けするとともに、従業員にはより安全で働きやすい職場を提供していきます。
当社は、研究・製造・設備等の社内関係部門、当社グループの日鉄ソリューションズをはじめとする社外のシステム・ベンダと連携して、今後も鉄づくりに最先端のITを活用し磨きをかけていくとともに、グループ会社を通じて、当社で培った高度IT 技術を提供していくことで社会にも貢献していきます。
自動車用鋼板には、走行時の燃費を高めCO2排出量を減らすために軽量であることと、衝突時に乗員の安全を確保することが求められます。これを同時に実現したのがハイテンです。さらに、デザイン性も重視されるため、延ばす、絞るなど複雑な成形性が求められます。そこで鉄の高温時と低温時で結晶構造が異なる性質を利用して、熱処理過程で緻密な温度制御を行いました。ミクロン単位でのつくりこみにより、軟らかい結晶組織と硬い結晶組織をバランスよく分散させることで、強くて成形のしやすい高成形性超ハイテンを開発しました。
また、さらに強度の高い1.5ギガパスカル級の超ハイテンを製造する設備を2020年に稼働させる計画です。
*ハイテンはHigh Tensile Strength Steel(高張力鋼)の略。引っ張り強度が1.0ギガパスカル以上ある鋼板を超ハイテン鋼板といいます。
燃料電池自動車の普及のためには、水素ステーションなどのインフラ整備が欠かせません。当社と日鉄ステンレス鋼管(日本製鉄100%出資子会社)は、商用水素ステーションの高圧水素環境下における配管や継手・バルブ向けなどに高圧水素用ステンレス鋼「HRX19®」を開発し、多数採用されています。
水素原子は小さいため金属組織の中に入り込みやすく、材料をもろくさせることがありますが、HRX19®は、ステンレス鋼への添加物の配合や製造方法を工夫することにより、この問題を克服した材料で、水素ステーション配管の長寿命化や安全性向上を実現しています。
また、HRX19®は既存材のSUS316Lに比べ、約2倍の強度を有しているため、高圧水素環境下でも薄肉化設計を可能とし、配管内径を大きくすることによる大容量、短時間水素充填を実現するステーションの設計ができるうえ、軽量化によるCO2排出量削減メリットもあります。
さらに、HRX19®は継手を使用せず溶接施工法を適用できるため、施工およびメンテナンスコストの削減に貢献します。
素材だけではなく、当社グループの日鉄P&EがHRX19®を活用した水素ステーションを建設しています。
錆びにくく従来品に比べて4倍長持ちする環境にやさしい建材です。中でも、近年急速に普及した太陽光発電用の架台として各地で採用されています。
カタマ®SPは、鉄鋼スラグが水と反応して自ら固まる性質を利用した簡易舗装材料です。防草効果があるため、メガソーラ発電所の発電効率を維持し、草刈り負担を軽減します。
陸上では、風切り音や低周波の問題などがある一方、島国の日本では海岸線が長く海上は強い風が安定して吹くことから、洋上風力発電が注目されています。日本製鉄グループは洋上風力発電の普及に向けて、施工性がよくて錆びにくく強度の高い鋼材や施工技術の開発に取り組んでいます。
CO2排出量の少ない再生可能エネルギーとして期待される地熱発電において、当社グループの日鉄エンジニアリングは、日本国内の大規模地熱発電所17ヵ所中9ヵ所を手がけており、豊富な施工実績とノウハウを持っています。
また、当社は、厳しい腐食環境にある大深度の海底油田用の油井管などをつくってきた技術を活かし、高温・高圧・高腐食性の環境に適した地熱発電用のシームレスパイプも提供しています。
揚水式水力発電では、上下に大きな調整池をつくり、上から勢いよく水を流して発電機を回します。その水路に使われる水力発電用水圧鉄管は、発電効率を高めるため落差を大きくした水圧に耐えられるよう高強度・高品質化が進められ、当社は国内で唯一100キロ級鋼の開発、実用化に成功しました。